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アフガニスタンをあきらめるな

2007年12月10日号(ニュースウィーク、Khaled Hosseini 記)

演台に立つといつも誰かが必ず手を挙げてこう言います。「それで、Hosseiniさん、あなたはアフガニスタンの将来について楽観的ですか、悲観的ですか。」私が最初にするのは、聴衆に私が小説家であることを思い出させることです。もし私が何かの専門家であるとしたら、それは私が自分の書いた本の中に作り出した登場人物達の内面生活についてであります。ですからそのような大きな問題について答える資格はまったくありません。このように言っていても、本当のことで、自分が用意された答えを持ち合わせていないために言葉をにごしていることもわかっています。ですから答えることにしますが、結局肩をすくめるだけで、終わってしまいます。

アフガニスタンについて楽観的であると言うと、どうしようもない世間知らずだと非難されることになります。南部で今年6千人近くの人が亡くなったタリバンの反乱を忘れたのか。アフガニスタンは世界のアヘンの93%を生産していることを知らないのか。政府内の汚職、依然として力を持っている軍閥指導者たち、各州にはびこる貧困、低い識字率、根強い女性抑圧、子供たちの命を奪う自爆テロ、これらのことを知らないのかと反論が頭の中で聞こえてきます。

もちろん、これらのことは知っています。この9月に国連難民高等弁務官と一緒にアフガニスタンを訪問しました。そしてカブールの道路で、自爆テロから防御するために作られた高い防護壁を自分の目で見ました。前回、2003年の春にカブールに来た時には、これらの壁はありませんでした。そして、今回人ごみやバザールを歩いた時に、不安な感じはありませんでした。カブールで何千人もの若者が仕事もなく、向かうべき方向もなくスラムに暮らしているのを見ました。北部では、自分たちで掘った穴に閉じこもって二度の冬を越した、20もしくはそれ以上のホームレスの家族と会いました。クンドゥズからマザリシャリフまでの間にある村から村へと、私は清潔な水を手に入れられない人、子供を行かせる学校がない人、病気になっても行くことができる診療所がない人々に会いました。1日1ドル以下で生活する、それも仕事があればの場合で、彼らは政府からの援助をほとんどあるいはまったく受けられなく、人々が基本的な生活をするために苦闘している、そういう家族に会いました。

とすれば、私はおそらくアフガニスタンの将来について悲観的になるべきでしょう。しかしそれでは知性による跳躍というものがほとんどありません。それに、過去6年間における目覚ましい発展についてはどうでしょうか。2003年にカブールを訪れたときには、戦場のようでした。ぎざぎざの瓦礫、破壊されて平らになった建物、屋根が無くなった壁というぞっとする光景でした。この9月に私が目にしたカブールは、劇的によくなっていました。町中の多くが再建されていました。有名なバーブル庭園のような文化的名所を訪ね、それらがみごとに修復されているのをみて幸せな驚きを覚えました。多くの町で、子供たちが制服を着て学校に通うのを見ました。実際、過去5年間に入学者は5百万人を超えるまでに増加しています。地雷は除去され、報道も、宗教的保守主義者からの攻撃はあるにしても、比較的自由ですし、テレコミュニケーションはブームになっています。(もっとも貧しい、もっとも人里離れた村々でも、ぼろぼろの服を着た老人が携帯電話で話しているのを見かけるという、不思議な経験をしました。)アフガニスタン北部で通った再建された道路は、完璧な状態で、通行も活発であり、商業にとってのよい兆候でした。

それに、命をかけてこの問題を抱えた国の再建のためにがんばっているすべての人々、アフガニスタン人と外国人の両方に、冷酷な懐疑主義がどんなメッセージを送ることになるのでしょうか。私がクンドゥズで会ったアフガニスタン人のUNHCR職員Dawood Salimiのような人々です。彼は7月に自爆テロにより危うく3歳の息子を失うところだったにもかかわらず、アフガニスタンに留まり難民を助けることを決意したのです。あるいは、タリバンの殺害の脅迫にもかかわらず教室を去ることを拒否している、無数の農村部の教師たちです。

悲観的か、楽観的か。9/11テロからまだ2年しか経過してなく、30年近い戦争、飢餓、干ばつ、過激主義、無法、そして大量の難民化、からまだ立ち直りつつある国について、そのような質問は多分早すぎます。あるいは、おそらく私やアフガニスタン問題の専門家に質問することは誤りであって、おそらくアフガニスタンの人々に質問すべきです。

今年の初めにアフガニスタン独立人権委員会がアフガニスタンの34州中32州で調査を実施しました。そして質問されたアフガニスタン人の80%近くが将来について楽観的であると回答したのです。この数値は並外れていると思います。(ここ米国内で私たち自身の将来について同じように答える人ははるかに少ないのではないかと思います。)この発見がアフガニスタンの生活水準が劇的に改善した証拠というわけではありません。むしろ圧倒的な困難に直面して、希望と楽観を失わずにいられるアフガニスタン人が持って生まれた能力を反映しているのです。そのことが、私にとっては、私たち西欧の人間が自分たちをあきらめていない人々をあきらめてはいけないということを道徳的に命じるのです。

アフガニスタンについて確実なのは以下のことだけです。米国とその同盟国の真のそして持続する長期な献身なしでは、アフガニスタンは破滅します。アフガニスタン人は自国の主権を誇りにしていますが、世論調査は繰り返し、アフガニスタン人の大多数が自国に外国人がいることに賛成であると示しています。彼らは、西欧が決意を弱めれば苦労して勝ち得たものがあっという間に消えてなくなることを知っているのです。であるとすれば、もし誰かが手を挙げて私にアフガニスタンの将来について質問したならば、答えは用意できていますが、今のところ、肩をすぼめておきましょう。

Hosseini氏は「君のためなら千回でも」、「A Thousand Splendid Suns」の著者であるベストセラー作家である。彼は2006年から国連難民高等弁務官事務所の親善大使を務めている。